Quemixと日産、量子コンピュータによる空力シミュレーションのソフトウェアの共同研究開発を開始 車両形状の空力シミュレーションを実現する技術開発に成功
2026年6月1日
株式会社テラスカイ
Quemixと日産、量子コンピュータによる空力シミュレーションのソフトウェアの共同研究開発を開始
車両形状の空力シミュレーションを実現する技術開発に成功
株式会社テラスカイ(本社所在地:東京都中央区、代表取締役CEO 社長執行役員:佐藤 秀哉)のグループ会社で量子コンピュータのアルゴリズム・ソフトウェアの研究開発を行う株式会社 Quemix(本社:東京都中央区日本橋 代表:松下 雄一郎、以下 Quemix)と、日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市 代表:イヴァン エスピノーサ、以下 日産)は量子コンピュータを活用した次世代の空力解析ソフトウェアの開発に向けた共同研究を開始しました。 Quemixと日産は、早期誤り耐性量子コンピュータ(Early-FTQC)上での実行を想定し、車両の複雑な形状を扱える新しい量子・古典ハイブリッドアルゴリズムを開発。シミュレータ上での実行において、従来の古典コンピュータを用いた解析結果を高精度に再現できることを確認し、共同で特許出願を行ったことをお知らせいたします。
【背景と課題】 カーボンニュートラルの実現に向け、自動車開発における空力性能の向上は、燃費(電費)向上や航続距離の延長において極めて重要な課題です。現在、主流のシミュレーション手法として「格子ボルツマン法(LBM)」が広く用いられていますが、量子コンピュータをこの分野に適用する上では、特有の技術的課題が存在していました。 従来の量子流体アルゴリズムの多くは、計算の簡略化のために「単純な立方体」や「規則的な格子」の中に閉じた空間を想定しており、車両の複雑な曲面上における「境界条件」を量子計算のプロセス(ユニタリ演算)に組み込むことが極めて困難でした。 具体的には、複雑な物体形状を正しく反映させる場合、また物体の境界にゼロではない(非斉次)境界条件が課される場合に、量子回路が膨大かつ複雑になり、現在および近い将来の量子デバイス(早期誤り耐性量子コンピュータ:Early-FTQC)では計算負荷と精度の維持が両立できないという、実用化に向けた大きな障壁がありました。
【開発した新技術と成果】 今回の共同研究では、複雑な物体形状や境界条件を量子コンピュータ上で効率的に処理するために、以下の技術を開発・実証しました。
量子・古典ハイブリッドアルゴリズムの開発
流入・流出や物体の移動等に起因する計算(非斉次項の処理)を古典コンピュータが担い、動かない物体の境界の処理を含む流体計算の主要部分を量子コンピュータが担う新しいハイブリッドアルゴリズムを構築しました。これにより、計算リソースが限られる早期誤り耐性量子コンピュータ(Early-FTQC)での実行を可能にしました。
車両形状を想定した高精度なシミュレーション
本アルゴリズムを用い、車両の複雑な物体形状を想定した空力シミュレーションを量子シミュレータ上で実施しました。その結果、従来の古典コンピュータによる解析手法と比較して、得られた結果が高精度に再現されていることを確認しました。
【図:車両モデルにおける空力解析結果(流線図)の比較】
本アルゴリズムによる計算結果(量子シミュレータ)。複雑な車両形状の周囲を流れる空気の動きが、古典LBMと遜色ない精度で再現されており、量子コンピュータによる実用的な流体解析の可能性を実証しています。
汎用性と知的財産化
本技術は自動車の空力解析に限らず、複雑形状が関わる流体シミュレーション全般(航空、船舶、建築など)に活用可能な汎用性を備えています。本成果に基づき、Quemixと日産は共同で特許出願を完了しました。
【今後の展望】 Quemixと日産は、今回の成果を足掛かりとして共同研究をさらに加速させます。今後は量子コンピュータ上での空力シミュレーションソフトウェアの実用化を目指し、実際の車両開発プロセスにおける空力解析への適用を推進することで、自動車産業の計算技術におけるパラダイムシフトを牽引してまいります。
なお、このたびの共同研究成果は2026年6月4~5日にグランドハイアット東京で開催される量子技術の国際的なカンファレンスである「Q2B 2026 Tokyo」にてQuemixと日産の研究者がケーススタディトラックに登壇し発表する予定です。
Q2B 2026 Tokyo(イベント公式サイト)
https://q2b.qcware.com/ja/conference/2026-tokyo
本件のQuemixによるプレスリリースはこちらをご覧ください
https://www.quemix.com/post/20260601-nissan
株式会社Quemixについて
Quemix は、株式会社テラスカイ(本社:東京都中央区、代表取締役:佐藤 秀哉)の連結子会社で、量子コンピュータ、量子センサ、材料計算関連の研究開発を行っています。「量子技術で人類が夢見た未来を実現する」というビジョン実現のため量子技術で時代をリードする企業のブレークスルーを支援していくことをミッションに、2019 年の会社設立時より誤り耐性量子コンピュータ(FTQC)向けのアルゴリズムにフォーカスした研究開発をしており、量子化学計算アルゴリズムとして数学的に量子加速が証明された「確率的虚時間発展法(Probabilistic Imaginary-Time Evolution、PITE®)」を開発・特許取得しております。日本における FTQC アルゴリズム研究分野をリードする Quemix では 2030 年を目標に材料計算・シミュレーション領域における量子コンピュータ実用化に向けて鋭意研究開発を進めております。
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