『SFA/CRMプロジェクト初期段階で押さえておくべきこと』

今日は少し毛色を変えてオーソドックでコンサルっぽい内容を取り上げたいと思います。

はじめに

salesforce.comは、1999年の創業から当初はSFA (Sales Force Automation)、CRM (Customer Relationship Management)の仕組みをカバーするソリューションとして市場に出ていました。それ以降、現在に至るまでの進化の過程は、皆様もご存知のように目を見張るべきものがあります。salesforce.comのソリューションの凄いところは時代を先取りし様々な新しい領域の機能を追加・拡張しているということに加えて、SFAのような元々ある機能についてもSales Cloudとしてバージョンアップ毎に進化している点にあると思います。ただ、SFAやCRMの領域において特に営業組織にシステムを導入する際に早いタイミングで押さえておいて頂きたいポイントがあります。

押さえておくべきポイント

Salesforceの良さの一つに最初はとにかく始めてみて後からどんどんユーザ要求も取り入れながら機能を追加・カスタマイズできることがあると思います。ただそれはプロジェクト計画もアプリケーションの設計も適当でも大丈夫ということではありません。営業組織も営業の数も少ない規模であればまだ何とかなるかもしれませんが、営業部門も複数あり営業の数も多い組織での導入、特に他システムとのデータ連携がある時など、プロジェクト計画段階もしくは要件定義段階で少なくとも下記の6点は、しっかり押さえておくべきだと思います。

1.  目的の明確化とKPI設定

2.  マネジメントの参画

3.  導入のステップ化

4.  入力・操作の簡素化

5.  最終アウトプットを意識した設計

6.  利用・運用体制(フォロー体制)と定着化
以下、それぞれについて説明します。

1. 目的の明確化とKPI設定

先ずSFA/CRMに限らず導入の目的の明確化とKPIを最初にしっかりと決めてくことは、どんなプロジェクトでも必須だと思います。営業の方からすると提案の見積の稟議申請、経費精算、注文書処理等は日々の業務の中で目的も明確で、こなさないと困る業務だと思います。では、案件獲得や数字達成ということになるとどうでしょうか?優秀な営業であればシステムの有無に関わらず、自分は案件も増やせるし、数字を100%達成できるし、システムが無くても営業活動はできると思うかもしれません。人によって営業スタイルも考え方も違うでしょう。若手の営業や数字が上がらず苦心している営業は何かもっとうまくいく方法があったらと思うかもしれません。ただ、個人の優劣・数字の浮き沈みに受注全体が影響されるのは組織として会社として見れば避けなければならないということは、ほぼ異論が無いことだと思います。それを実現する手段がSFAやCRMを導入する目的だとするとこれも異論が無くなるでしょうか。何故必要かという理由(裏返せば目的にもなる)をしっかり定義し必要性を共有化する⇒何が目的かを明確化するというプロセスがSFA/CRM導入前に必要です。また、これと併せて何を持って組織、チーム、個人の成果・評価指標とするかというKPIも設定することが重要です。指標を明確に決め、SFA/CRMの導入目的と併せて運用することにより、単なるシステム化という観点だけでなく、業務と切り離せない仕組みにすることが大切です。

2. マネジメントの参画

目標、KPIを決める際にはマネジメントの参画が必須です。これはマネジメント層がSFA/CRMを通して会社にとって必要となる目標・指標をどのように実現するのかという意志を強く反映させ、その重要性を社員(営業部門)の動機をつけるためです。また、慣れない最初の内は、必要な情報でもなかなかタイムリーに入力・更新せず、使われないこともあるため、マネージャー以上の層の方にしっかりシステムを通して活動を把握しているということを営業にも認識してもらい、やる気になってもらう必要があります。プレッシャーが無いと、なかなか自分の営業状況、案件状況を随時システムに反映するのは億劫になる傾向が強く、また上司もシステムを通してアドバイスをしてくれるという一体感が無いと、いつかは使われないシステムになってしまう恐れがあります。マネジメントの協力・支援が随時得られるよう、プロジェクト計画段階から参画してもらうようにすることが肝要です。

3. 導入のステップ化

営業活動に全て必要な仕組みや機能を最初から揃えて導入できれば理想的ですが、時間的にもコスト的にも難しいというケースもあると思います。その場合は段階的導入を計画することも一つの方法としてあると思います。 あくまでも一例ですが、いくつかパターンを挙げてみます。

(1)  アプリケーション機能の観点
① 顧客(会社・コンタクト)情報管理、スケジュール・活動管理、案件・商談フォーキャスト管理

② 見込(リード)情報管理、キャンペーン情報管理

③ 契約管理、注文管理

④ パートナー/代理店管理、一般消費者/顧客管理

(2)  システム機能の観点
① ワークフロー(申請・承認)

② モバイルアクセス

③ 基幹・他システム連携

④ SNS・ソーシャル連携

(3)  組織・部門など利用者の観点
① ある1部門、選定した部門でのトライアル

② トライアル結果を踏まえ、改善要望を収集・反映した上で次の部門に拡大

③ 最終的に全社導入 これらのパターンを組み合わせて検討することも可能ですし、実際にはその方が多くなると思います。

4. 入力・操作の簡素化

ここからは少しシステムの作りにフォーカスして見てみたいと思います。目標・KPIが明確で、マネジメント層、上司からのプレッシャー(支援?)があっても入力項目・入力箇所が多すぎる、画面遷移が多く使いづらい等、使い勝手の問題で営業活動を効率化するためのツールが逆にデータ入力・更新にばかり時間がとられ非効率を生むことも考えられます。

(1)  入力項目を減らす工夫
良くあるのが、上位層や管理側の部署が様々な情報を収集したいため入力する項目が多岐に渡り収集のための仕組みになってしまうケースです。もちろん収集結果を分析し営業サイドに有用な情報を提供できれば良いのですが、それでも日々の入力負荷と必要な情報と間に優先順位付けをして、項目数は極力抑える工夫が必要です。

(2)  画面遷移を減らす工夫
次にSalesforce.comに特有の画面構成により、データが基本画面と関連リストに分かれ複数のオブジェクトにまたがるデータを同時に入力・編集できないため、何回も画面を切り替えながら操作することが必要になることもあります。導入時のカスタマイズコストやメンテナンス性を考えると、できるだけ標準機能+αの設定を工夫して対応することが理想ですが、日々の入力負荷を抑え使い勝手の良いシステムを構築することが、結果として利用も進み、長期間使い続けてもらえることに繋がります。利用頻度が高くなる画面については思いきってVisualforceなどで開発することも選択肢です。手前味噌になりますが、テラスカイが提供しているSkyVisualEditorを利用頂くことにより簡単に複数オブジェクトにまたがるデータを一つの画面で扱えるようにできます。コードが書けない人でも作成できますので開発、メンテナンスも容易です。

(3)  二重入力を無くす工夫
忙しい営業の方からすると同じデータをさっきも入れたのにまたこの画面で入れるの?とか別のシステムで入力したものなのにまたSalesforceでも入れるの?等の不満が出てくると使い勝手が悪いシステムと言われてしまうと思います。そのためデータの二重入力を避けるためにもデータを登録する際に既存のデータをコピーする、データ保管時に項目自動更新を使う、Apexトリガーを使い別のオブジェクトのデータ項目を更新する、マスターとなるようなデータは基幹/他システムと連携して持ってくる等の工夫も有用です。 これらの事項はデータの項目設計、オブジェクト設計、画面設計、基本的な入出力設計に関わるものですが、費用にも大きく影響するので、要件定義段階には決めておくことをお薦めします。 あと、導入ステップでも書きましたが、システム設計上の大きな観点からは、営業がいつでもどこでも必要なデータにアクセス・更新できるようモバイルでの利用検討、先述のデータの重複入力を避け必要なデータを参照できるようにするためにも基幹のマスターデータ等との連携を前提としたアーキクチャ設計検討につき、計画段階で決めておくことが必要です。

5. 最終アウトプットを意識した設計

セールスフォースは使いながら機能を改善、追加していくことができて手軽に導入できることが謳い文句で、特に標準機能ベースで設定(カスタマイズ)していればいるほどそれはあてはまります。データベースや画面に項目を追加したり、画面のレイアウトを変更したりすることが非常に簡単にできるのは周知です。 ただ、気を付けて頂きたいことは特に次の2点です。

(1)  データベース・オブジェクトのリレーション
SFA/CRMにおいては特にKPIが重要であることは前述しましたが、そのKPIをタイムリーに把握・共有する仕組みとしてセールスフォースのレポート・ダッシュボードがあります。営業の日々の活動・数字からチーム、部門全体のKPIをレポート・ダッシュボードで定義して有効利用できます。但し、レポート・ダッシュボード設定は、データベースの主従/参照関係、オブジェクト間のリレーションにより設定できるできない、あるいはカスタムレポート設定が必要になるなど思ったより手間がかかる問題も出てきますので、最初からどういう種類のレポート・ダッシュボードを用意するか、どういうイメージにするかは、要件定義の段階で決めておくべきと思います。データベース・オブジェクト設計を実施する際に最終イメージを意識しながら進めることが肝要です。後からダッシュボード・レポートを決める場合、データベース・オブジェクトのリレーション変更が必要になってしまうと、画面設計・開発や連携設計・開発にも影響(後戻り)します。 あと、検索パフォーマンスの観点からも補足しますと、何度も繰り返し呼び出し処理を行ったり、検索条件を複雑にしたりするような複雑なデータリレーションにしないよう初期段階から考慮しておくことが必要です。特に顧客データなどが数百万~数千万件に及ぶ場合は特に気を付けておく必要があります。実際にパフォーマンスが出ないためデータ構造・リレーションを後から変更することはかなり大変です。

(2)  他システムとの連携
基幹の顧客マスターや売上システムと連携することは決して少なく無いと思います。セールスフォースと異なり、基幹系システムでは項目の追加・変更にも時間がかかることも多いため、連携が前提の場合は、連携対象となるデータベースの項目は同様に早いタイミングで決めておくことが必要です。先にも書きましたが、連携プログラムの設計・開発の後戻りを避けることにもなります。

6. 利用・運用体制(フォロー体制)と定着化

SFA/CRMを営業活動の仕組みと捉えると、単にシステムを"使う"だけでなく、システム日々のプロセス・業務として浸透(=定着化)させることが必要になります。そのためには各営業部門・営業の努力だけではなく、日々の利用状況、データの活用度合い、数字への影響、結果との関連を収集、客観的に分析し、継続した改善を促す運用体制が必要です。この運用時の体制は、先ずシステムを導入し動かすことばかりに気がいってしまい後回しにされがちですが、当初導入時にしっかりとプランしておくことが必要です。これは営業組織(部門数、人数)が大きくなるほど必要性が高まります。これは利用していく中で色々な要望が出てくると思いますがそれを取り纏め、今後の改善をプランしていくことが必要となるからです。また、利用状況・活動状況と結果の分析を行い、提案・改善していくことはそれなりの時間が必要となるからです。このプロセスが無いと営業を取り巻く周囲の状況は日々変わっていくのに、営業が利用している仕組みに反映されず、結局それをカバーするために現場で手作業、Excelに頼り始めるという悪循環に戻り兼ねません。プロセス定着化には営業管理・支援としての役割が欠かせず、また後から組織化は難しいこともあるため、導入当初から是非考慮しておいて頂きたい項目です。

おわりに

紙面の都合もあり全てについては詳細に書けませんでしたが、また機会があれば続編として書かせて頂きたいと思います。今回の内容が、少しでも導入時の参考になれば幸いです。